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2011年9月 7日 (水)

いのちだらけのまつり

 山羊のキッドが子を産んだ。

 

前日、突然に腰砕けになり、目の焦点が定まらなくなったキッド。

 腰麻痺(ようまひ)という山羊特有のフィラリアかと焦り、安楽死という言葉が脳裏をよぎった。

 朝、5時頃から苦しげに啼き声をあげ、私が下駄を履いて駆けつけてみると、小屋の前に横たわったキッドの後ろには、生まれたばかりの子山羊が湯気を立てて横たわっていた。

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 腰麻痺ではなかったという安堵と、子が生まれたという喜びに、思わず座り込んだ。

 口鼻についた膜を手で拭いとってやると、子山羊はぷるぷると震えながら口を開けた。

「産まれた!産まれた!!」

 外から窓を叩いて、カミさんと子ども達を起こす。

 思えば、三角櫓のある我が家では、子ども達に動物の屠殺を見せることはあっても、命が生まれ出る瞬間を見せてやることはなかった。

 パジャマ姿で急いで走ってきたカミさんと子ども達。

「かわいい~!」

 と、普段なら寝ぼけ眼の時間帯なのに、目はパッチリとまだ濡れそぼつ子山羊をとらえる。

 キッドがヨロヨロと立ち上がる。未だに焦点は定まっていない。横長の瞳孔がキョロキョロ動く。

 産道から、破水していない羊膜が小さな水風船のように垂れ下がっている。

 生まれたばかりの子を気づかう余裕もなく、何歩かよろめくように移動すると、またドサリと倒れ込む。

 「グェエェ~」

 と何回か啼くと、産道からしごくスムーズに、前脚をきっちり揃えて、ズルリともう一匹の子山羊の上半身が滑り出てきた。

 前脚をつかんで、最後の一息みと同時に引っ張り出す。

 ぬるぬるしていて暖かい産まれたての山羊の赤ちゃん。

 子ども達が歓声をあげる、

 新しい二つの命。

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 先日(8月20日)、小雨の降る中、行われた「命だらけの祭り」。

 夏の疲れと、311以降、何もかもが宙ぶらりんの様な思考回路の中、急ピッチで進めた祭りの準備作業。

 至らぬ点は多々あったが、

「これをやらないと、全てが終わってしまう気がする。」

ある日、ボソリと言った医院長の言葉が全てを物語る。

 311からどこか歯車が狂ってしまったこの世の中。火の粉をかぶる覚悟で、懸命に息を吹き続けないと消えてしまう炎があることに気づかされた。 

 田植えから一瞬の内に時間が過ぎてしまったかのように感じたのは、自分を忙しさに追い込み、無意識に目も耳も塞ごうとしていたからだ。

 その心の空洞を見透かすかのように、田んぼには、雑草がこれでもかとはびこった。

 

 多くの人が、単管とコンパネで手作りしたステージに上がって、歌ってくれた。

 大多喜から来た人、魅酒健太郎さん&ゆみさん、谷津田バス、歌姫&リンさん、そしてのりこさん率いるグンデル、YUKIさんのタールクラブ。

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 霧雨のスクリーンがもう一枚目の前にあって、ライブなのにどこか非現実的で、夢見心地だった。

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 あばらを折ったでれすけ氏は、猛然と鶏肉を焼き、煮卵とネギを載せた「変態親子丼」は飛ぶように売れた。飛ぶように売れたのに、なぜか煮卵だけは何十個も余ってしまった。

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 四季菜さんは、手慣れたもので、谷津田の悪路もものともしない。ギターを持ってステージに上がったかと思うと冷静に食べ物を売っていて、最後はシラフで帰っていった。

 うみやさんも、いつもおいしい海の香りを谷津田に届けてくれる。Aちゃんは天幕の下、天使の眠り顔を見せていた。

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 残念だったのは、去年来てくれたなかのまきこちゃんが来られなかったこと。

 彼女となら、いくら飲んでも悪酔いしないから不思議だ。

 が、新しいメンバーも来てくれた。

 東京からは、KちゃんとSちゃん。どんなことでもいやな顔一つせず、いつも一生懸命手伝ってくれる。

 ステージの照明の逆光の中、音楽に合わせて体を動かすシルエットに命の躍動を感じた。

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 キッドは、自分のおっぱいをちゅうちゅう吸って、母乳の出を良くしようとしていた。

 誰に教わるでもなく、昨日までとは全く別の存在になった「母親キッド」。

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 一瞬、

(大丈夫かなぁ?キッド、育てられるかなぁ?)

 と、疑った私を見透かすかのように、今は焦点の定まった目で、私をジッと見るキッド。

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 私達が、子山羊に触っても怒らないが、犬のオカラが近寄ってくると角を向けて威嚇する。オカラは、好奇心と母性(オスなのだが)いっぱいの眼差しで寄ってくる。子山羊にちょっかいを掛けたくて仕方がないようだった。

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 子ども達は、まだ濡れて土のついた子山羊達を抱っこしたくて仕方がない。パジャマが汚れるのもおかまいなし。

 子山羊が動く度に奇声をあげる。

 名前もすぐに決まった。

 タイ(♂)とフウ(♀)。

 台風が近づいていたからだ。

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 ラジオのニュースでは台風が最接近しているらしかったが、バカの丘には、穏やかな風が吹いていて、日差しはどこまでも明るく、新しい純白の命にキラキラと反射していた。

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コメント

山羊のフィラリアも致命的です。
友人が、数十頭の山羊を飼っていたのですが、ことごとく蚊にやられていました。
猫のエイズとか気味の悪い病気が多いですね。
山羊ミルクはアレルギーがないとかで大変流行っていますね。

投稿: 拓座風流 | 2011年9月 8日 (木) 16時46分

山羊のフィラリア、初耳でした。人間、イヌが罹ることで有名ですが(イヌの場合は致命的)、山羊にもとは・・・致命的ではないのですか?
 そういえば、私が山で暮らしていたころ、懇意にしてくれた女性(年齢的には私の両親くらいの)に、飲ませてもらったホット・ミルク(山羊の乳の)が格別美味しかったです。

投稿: 森下礼 | 2011年9月 7日 (水) 21時59分

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