バーでタベルナ
「ここを直売所にするんだ。」
牛舎8号ができる前、改装前の牛舎を真っ先に見に来てくれたのは、スペイン人カメラマンのダビドだった。
コンクリートの床や、牛を閉じ込める頑丈な木の扉には、カビカビに風化した牛糞がこびりついており、外壁に張りついたビニールやベニヤの残骸が、未練がましく風にバタバタと揺れている。
錆びたトタン屋根からは夜空の様に光が漏れ、床には水溜まりができている。
かつては、牛が餌を食んでいた餌槽の底には、錆びた釘やプラスチックの残骸が散らかっている。
「ここを直売所にするんだ。」
私は、ダビドの方を見ずに、そうくりかえした。
呆れ顔でため息をつかれるか、眉間に皺を寄せて考えなおすよう懇々と説教されるかのどちらかと思っていた。
ところが、彼は感嘆の声をあげるや、興奮して歩きまわり始めた。
「すごい!!ここは、まるでヨーロッパのMercato(マーケット)みたいだ!」
半ば途方にくれていた私を、彼のその豊かな想像力がどれほど勇気づけてくれたことだろう。
その時から描きつづけてきた牛舎8号のイメージは、オーガニックの農産物があって、アートが混在していて、円形劇場のようなエンターテイメントな場があって…、
人々が憩えるカフェがある。
現在の牛舎8号の台所はクリーン・センター(ゴミ集積所)からもらってきた流しに、元々牛の為にあった井戸水の水道から簡易的にホースを引っ張って蛇口をつけただけのものだ。
鋳物のガスコンロやカセットコンロもあるが、燃料費節約と充分な火力の確保の為、薪を使って、カマドで調理することが多い。
まな板だけは、上等な充分な厚みのイチョウの木で、猪一頭でもさばけるだけの大きさのものがごろごろある。
そんな台所なので、イベントの際の賄い時は、まるで野戦病院のような様相を見せる。
が、そんな戦場にこそ一流のシェフはいる。
ドラム缶を切ったり、溶接したりして、銀色にピカピカ光る焼き芋ロボットを作り上げ、毎週日曜日に焼き芋を販売しているせんげんやまさんは、中でも指折りの名コックだ。
魚をさばき、毎月第2日曜日には燻製をつくる。そんな男の料理だけでなく、みそ汁から煮魚から、そこにあるもので何でもスピーディに作ってしまう。作るだけじゃなく後片付けも完璧にするのだから、ホンモノだ。
みちよお母さんにしろ、出雲神社のえみこさんにしろ、マダム・エバタにしろ、みな料理上手の振る舞い好きなので、生産者さんが集まる場であれば、会議にしろ、イベントにしろ、重箱が並んでおかずの花が咲き、その賑わいたるや、盆か花見か正月か。
人々が集えば、大きな楽しみの一つは食べること。
11月27日に行った芋煮会は、芋堀り体験とセットの「食」のイベントと言っていい。
30人のお客さんをたった一日もてなすために、あの野戦キッチンで、まる2日間、せんげんやまさんを中心に何人もの人が準備をしてくれた。私は何の役にも立たなかったが、みんなの一生懸命を見ていたので、客であれ、誰であれ、文句を言わせないようにしようと一人ギラギラしていた。
が、そんな心配はまったく無用で、主催者の御宿町商工会青年部もお客さん達もみんな終始笑顔で大満足してくれた。
(「食」というものは、もしかして、食べる方より人に振る舞う方が幸せになれるのかな?)
と、ふと思った。
親愛なる生産者の皆様だけではない。
ビストロ・クリハラという 料理に特化したホームページまで作った大ちゃんこと栗原大輔氏。
食えない喰えないと言われてきたハロウィンかぼちゃを見事に50人前のおいしいポタージュに仕上げたばすくん。
「(椎茸の)アワビの刺身」、「黄金卵」等々…、安価な食材を次々と高級食材に変える天才でれすけ氏。
野を見渡せば、他にもたくさん、食のアーティスト達が、刄(包丁)に磨きを掛けて待っている。
…ということで、カフェを作り始めることにした。
牛8カフェでは、オープン後は、そんな皆様方に、ぜひ、「食のイベント」を開催して大いに腕をふるって頂きたい(と勝手に思っています)。
やり方は、今までのイベントと同じ。
- 食のテーマを考える
- 旬の食材と相談してメニューを決める。
- 限定何人かにして、完全予約制にする。
- チラシやHPで客集めをする。
- 当日、大盛況でてんてこ舞いになる。
主力の、ひら飼い鶏の産みたて卵は、オムレツでも目玉焼きでも何にしてもおいしいが、せっかくだから、やっぱり卵かけご飯(これは私でもできそうだ)。醤油やトッピングにもこだわりたい。
ゆくゆくは、自社農場の牛肉も使いたいが、マクロビオティック・メニューの日をつくってもおもしろい。
牛8オーガニック野菜は言うまでもなく、うみやさんや滝口さん、漁師の直売所「いさばや」店長に就任した中村船長との「海とのコラボ」も楽しみだ。
コーヒーにもこだわりたい。
アフリカの友人から顔の見える取引をしたい。フェアトレードとはどの程度からいうのだろうか疑問だ。スターバックスですら、生産者の生活保護を謳っているのだから(笑)。
その辺のことも自分が勉強しながら、コーヒー豆生産者についてのドキュメンタリー映画なども上映していきたい。
牛舎8号は夜が素敵だ。
スターダストがよりメタリックになって、オレンジ・オペレーションが緋色に光る。
全てが魔法に掛かったようにガラリと雰囲気が変わる。
飲食の許可をとれば、アルコールも出せる。実は、ダビドとも、
「バーがいいかも…。」
なんて話していたが、深夜営業は難しいので、しばらくは、イベント後の、主催者達の秘かな楽しみとなるだろう(?)。
翌朝…、少し酔いの残る頭で悩む。
谷津田の炊き立てご飯にひら飼い鶏の卵かけご飯、牛8野菜入りの自家製味噌汁。
それとも、
Oto(手作りパン屋)のパンにアフリカのコーヒー、目玉焼きと小糸在来のビーンズにジビエのウィンナーでイングリッシュ・ブレックファスト?
どっちにしようかなぁ…。
そんな幸せな選択で始まる日常。
何にも怯えずに済む、そんな普通の世界にしていきたい…。
スペイン語
Bar(バル)=バー
Taverna(タベルナ)=居酒屋
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コメント
しげこさん
十分過ぎるほど頑張ってるし、周りに素敵なエネルギーを分け与えているじゃないですか!
すばらしい息子・娘さん達も大活躍ですね。
また、風の谷ファームに、癒されに行きます!
投稿: 拓座風流 | 2011年12月15日 (木) 18時06分
怒涛の1年だったと感じるのですが、開店前を知るものとしては、みなさんのパワーに圧倒!!私ももう少しがんばろ!!
投稿: しげこ | 2011年12月15日 (木) 07時22分
海はなくならない…
さすが!スケールがでかいぜ!!
投稿: 拓座風流 | 2011年12月 3日 (土) 21時06分
まぁ~
海は無くなりませんから(笑
お互いに元気なうちに来てくださいナ
投稿: トモダテ | 2011年12月 3日 (土) 19時54分
うんうん。
行動力とおもしろいこと好きのトモダテさんが近所にいたら、かなりおもしろくなっていただろうなぁ~。
房総半島と紀伊半島はなんか似てますね。
流れてきた人もいっぱいいるらしいし。
海路でトモダテさんちに遊びにいくと豪語して何年になるのやら…。
投稿: 拓座風流 | 2011年12月 2日 (金) 21時31分
いいね~
楽しそうやね~
近所なら、インパクトドラバー持参で
手伝いに行けたのにね~(笑)
投稿: トモダテ | 2011年12月 2日 (金) 10時09分