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2012年1月 1日 (日)

バカの見る夢

 緑のさざ波が、広い牧草地を駆け抜けていく。

 風は馬のたてがみをさらって、透明な空へと抜けていく。

 風にはどこか潮の香り。

 海の見える丘の上、放し飼いの馬がいて、豊かな作物が実り、人々の歌声と笑い声がこだまする。

 私は旅人で、風の様に空からその牧場を俯瞰する。

 子どもの頃から、ずっと私が抱いてきたイメージだ。 

 自由な環境で動物がいて、太陽の光と水だけで作物が育ち、その恵みを分かち合う広場があって、無限のエネルギーが循環する。

 今、私が実現したいと願う夢。

 

 クリスマス・イベントは無事に終わった。

 牛舎7号の中には、青い卵がまいていった紙吹雪が本物の残り雪のように白く光っている。掃き掃除をしていると、ステージの隅の暗がりに、何かの気配を感じた。

 見ると、緋色のリボンと姫リンゴいっぱいつけたこんもりと三角帽子の様な、鉢植えのコニファ。鉢には赤い布を巻いている。

 冷たくて暗い冬の牛舎7号の中に置き去りにすると枯れてしまうので、そっと抱えて外に出した。思ったより軽かったので水をやる。

 このコニファ、去年の11月、牛舎8号オープンのお祝いに蛙の友達の花屋さんが送ってくれた大事なものだ。

 鉢植え植物を育てるのは大変だ。日当たりに気をつかい、水をやるにしてもやり過ぎないように注意して…と気をつかっているのに、その成長は遅々として日々の目にはわからない。

いつしか、その存在を忘れ、気づいた時には、枯れている。

 だからといって、いきなり地面に移植すると、今度はいつの間にか雑草の陰に埋もれ消え、どれがどれやらわからなくなって、結局、草刈り機で十把一絡げに刈られてしまう。

 

 人の描く夢も同じ毎日、気にかけて育てていかないと、いつの間にか枯れるか消えるかしてなくなってしまう。

 

 

 ファームリゾートとして生まれ変わろうとしている鶏卵牧場。

 30数年前、循環型農業を目指して、ひら飼い鶏卵を始めた村石社長。ここは、生き物が共生できる未来型のモデル・ファームへと変貌を遂げる可能性が大いにある。

 

 311の震災と原発事故をダメ押しに、今までの大量生産・大量消費社会から、次の世代を視野に入れた自己完結型の循環型社会へと価値観が大きく変わりつつある。

 既存の農業が、グローバル企業と傘下の大企業に乗っ取られつつある中、地域レベルでの農業をこれからも続けていくためには、持続的な循環型社会を目指していく他はない。

 簡単に言うならば、オーガニック(無化学肥料・無農薬栽培)な作物や動物を育てられる田畑や牧場があって、それを販売する市場や食堂、食品加工場があり、それらの設備を自然エネルギーで運転することができる地域社会を創ること。

その中で、作物の付加価値を高めていきながら、次の世代を育成していく必要がある。

 

 私は、それをまずは鶏卵牧場から実現したい。一つのモデル・ファームを創り、そこからモデル地域(村や町)へ、それは今までのように拡大ではなく、家族単位へと縮小発展し、最後は、種々様々な小モデルが世界中へ拡散する。

 

 日本獣医生命科学大学の松木先生の講演で、ヨーロッパに点在する自己完結型の循環型農場がいくつも実際に存在することを知った。

 私自身も、家族単位で、自給自足かつ文化的な生活をしているファーマーをオーストラリアやニュージーランドでいくつも見てきた。

 そして、それらは、「テクノロジー」が生まれる前、「サスティナブル」や「パーマカルチャー」等の流行りの言葉が生まれる前から、日本人が一番得意としてきた暮らし方だ。

 

 

 では、具体的にどうするか?

 有機農業に取り組んでいる人は、潜在的に多い。

 いわゆる慣行農法(実際はとても歴史は浅いと思うのだが)で農業を営む人達も、本音では、化学肥料や農薬を使いたいとは思っていない。

「農業だけでは食っていけないので、兼業農家にならざるを得ない。そうすると、有機農業で本来掛けなけれないけない時間はなくなるので、化学肥料や農薬に頼らざるを得ない。化学肥料を使えば使うほど、虫が湧き、農薬の量も増え、悪循環に陥る。」

地元の慣行農家さんが、渋い顔で言っていた言葉だ。当然、孫には、無農薬の野菜や果物を与える。

 

後継者の育成も大きな課題で、農地法の五反歩条項が大きなネックになっている。が、村石社長のような大農家や行政区が大きく農地を借りて、小区画で貸すこともできる。

都会から、新規就農したいと思っている若者は結構多い。

都会から田舎や農業に幻想を抱いてくる人達が多いのは事実かもしれないが、幻想を抱くこともできない現状の方が問題だ。

牛舎6号は、農業の大型機械を保管、修理したり、技術を共有、或いは新規就農者への技術指導したりできる場所にしたい。

課題は山積だが、御宿町も、有機農業や新規就農者受け入れへの取り組みを熱心に始めている。二人三脚で進んでいきたいと思っている。

 

農業もさることながら、エネルギーの自給自足も重要だ。

鶏卵牧場の様に、毎日、大量の家畜糞尿が定期的に出るところでは、バイオガス・プラントが有効だ。香取市の和郷園、埼玉県の小川町、岩手県の葛巻町が、実践・成功しているモデルとして有名だ。

バイオガスを、タービンで発電すれば、毎月、牧場の電気設備を運転して尚、東電に売ることだってできるだろう…。但し、東電が買い取ってくれればの話だが。

伊藤さんが発起人の「いすみのエネルギー自立を考える集い」の中で、手塚さん始め電気に詳しい人々に教えてもらったところ、「電気の自給自足」のネックは、

l 送電線を東電が牛耳っていること。

l 交流であること。

だそうだ。

なので、市民発電所を仮に作るとすれば、家電や機械設備は直流用のものかインバーターを使い、なるべく発電所と使用箇所の距離を短くして、既存の送電線を使わないようにすることが重要だ。

 

いきなり、大規模なものは無理として、誰でも出来そうな簡単な方法を考えてみた。

「鉄腕ダッシュ」という番組の中でソーラー・カーという企画があった。

軽の箱バンの屋根にはソーラー・パネル、中にはぎっしりバッテリーを積み、地図上を一筆書きで日本一周をしようという企画だ。

 

例えば、廃車になった軽バンをもらってきて、自宅の横に停めておく。車内にはソーラー・カーの様に、バッテリーを可能な限り積み込み、配線する。車だけでなく、家の屋根にもソーラー・パネルを載せて、車のバッテリーに接続する。

直流を交流に変える、シガーソケットに刺すタイプの数千円のインバーターを車の部品屋で買ってきて接続すれば、今ある家電製品・電気設備を使うことができる。

日照不足で電力が足りなくなれば、エンジンを回せばいい。

ソーラー・パネルやバッテリーに費用がかかるが、うまくローンを組めば、毎月の電気代で相殺できる。

他にも、電力に頼らないミニマムでより効率的な技術はいくらでもある。脳のない蟻ですら、キノコを育て、空調設備のある巨大マンション(蟻塚)を建てるのだ。

 

原子力発電なんかは、利権と核兵器と次世代の汚染の為に存在している悪魔の技術としか思えない。

技術的にも、空き缶と備長炭で出来る電池の方がよっぽど洗練されている。重く冷たい金属が分解して、最も軽くて刺激的な電気になるのだ。そこには、宇宙の神秘すら感じられる。

人間の考える「テクノロジー」は、深いところで哲学と結びついていなければ、使用するべきではないと思う。

 

 

ひら飼いの鶏と、牛がいて、牛舎8号という直売所と有機農園ができた。

現在、建築中の食堂が完成し、将来、バイオガスなどの糞尿や作物残渣をエネルギーに変える設備が出来たとしたら…。

そこは、まだまだ完全ではないにしろ、自己完結・循環型のモデル・ファームとなる。

そこで、自由な環境で育てられた動物に触れられたり、馬や馬車に乗って遊ぶことができたり、安全でおいしい食材を使った料理を食べて、泊まることもできるとしたら…、

そこは、本当の意味での、次世代「観光」ファームとなるだろう。

 

 

牛舎8号オープンの日から一年間、大事に育てられた鉢植えのコニファ。

狭い鉢の中、このままでは枯れてしまうと、年末のある夜、まどろみの中、急に思った。

翌日、プロムナードのコンクリートにカッターを入れ、鑿岩機で壊した。スコップで可能な限り穴を掘り、岩を取り除いて、コニファを植えた。

真砂土を入れ、レンガで囲う。

いよいよ、待ったなしの2012年が始まった。

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明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

 

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