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2018年6月

2018年6月26日 (火)

大鷹の見た夢

長年放置され、化石の様にその存在を忘れ去られた杉林。

竹が侵入し、そこにツタが絡まり、日の差さぬ地面にはアオキやまむし草やドクダミばかりが生い茂る。

そこに人の手が入ることで、森に光が入り、今まで土の中で眠っていた種子が目を覚ます。

両側を山で挟まれた調整池には、100羽あまりの緋色も鮮やかなオシドリ達が、きらめく日の光に紛れて見える。

山の斜面のクヌギ林にはカブトムシやクワガタが潜み、どこからか大鷹の鳴き声が聞こえてくる…が、人にその姿を見せることはない。

木立を透かして、野生馬さながら、数頭の馬の群れが見える。

競走馬を引退し、15haの放牧地で、余生を自由に生きる馬達だ。対岸のゴルファー達を尻目に優雅に草を喰んでいる。

これが、サンクチュアリ。

私がイメージする東京クラシッククラブの未来の姿。

 

ゴルフの起源は諸説ある。

その昔、スコットランドの牧場で、牧童達がヒッコリーの枝で石ころを打って、ウサギの穴に入れて遊んだという説が好きだ。

現に、羊の群れが放牧されていていたり、カナダでは野生のカリブーが出てきたり、フロリダではワニが(!)出てくるようなゴルフ場も世界には、少なくない。

 

環境破壊のイメージが強いゴルフ場に私が仕事として関わるとは思ってもいなかった。

でも、実際に関わってみると、(東京クラシックのような新設ゴルフ場は特に)世間で言われているよりも遥かに農薬等の規制は厳しく、法律上は無農薬を謳っても良いくらいだということがわかった。     

そして、そこには、森があり、草原があり、水辺があり、その境界線が無限のグラデーションを生み、実は、多種多様な動植物に住み処や狩り場を提供していた。

しかしながら、ゴルフ場の管理者もお客さんも、グリーンやフェアウェイには目がいくものの、周辺に取り残された森にはあまり価値を見出していないようだった。

 

東京クラシックには、開発中に大鷹の巣が見つかり、開発中止になった幻のコースが15haある。そこに引退馬を放牧し、馬の楽園にしようというのが、そもそもの東京クラシックに馬を導入するきっかけだった。

放牧地だけにとどまらず、オーナーの鶴の一声により、乗馬クラブや馬場もつくろうということになった。加えて、目玉として、ゴルフ場周辺の森を馬で一周できるトレッキングコースを整備しようということになった。

しかし、言うは易しで、いざやってみると大変なことだと思い知った。

周回5kmある馬道は、ゴルフの球が飛んでくることもある。

杉の枝葉は年中落っこちてくるばかりか、溝腐れの入った幹は強風の翌日には何本も折れて倒れる。台風の多い年は、全体で1000本以上もの杉が倒れた。

放牧予定地は、長年放置されていたために、太くて背の高い笹が立錐の余地もなく地面を覆っている。

始めは、一から開発に携わっていた地元業者の人達と山を切り拓き、森の整備を手伝ってもらっていたが、周辺環境やそこにすむ動植物達の住み処をつくっていくという意味では、開拓技術だけではなく、環境や生態系に詳しい人が必要だった。

そこで、千葉自然学校で知り合った上田さんに協力をお願いすることにした。

地面に落ちた枝を拾い、下草や笹を刈り、混みすぎた木を間伐し、倒木を片付け…と作業は永遠に続く。倒した木の幹は、重機で一カ所に集積してチップ屋に持って行ってもらい、枝葉は、隙を見ては燃やしていたが、消防法のからみもあり、クラシックのオーナーに頼み込んで大型の自走式のチッパーを買ってもらった。

人海戦術だけでは拉致があかないので、大型の乗用ハンマーナイフ(草刈り機)を二日間借りて、立ちはだかる笹の兵隊に突撃を繰り返し、なんとか馬道開通の目途はつけたものの、笹の切り株が馬の蹄に突き刺さる事を考えると、仕上げにはやはり刈払機が必要となる。

作業が進んだように思えても、全体から見たら、気の遠くなるような未開拓地がまだまだ残る。

そこは、いろんな意味でのフロンティア。

 

森に少しずつ光と風が入ってくるようになると、見られる動植物の種類も豊かになってきた。

大鷹の鳴き声も、厩舎の近くで聞こえるようになったし、調整池にはオシドリの営巣地があることもわかった。

上田さんにセンサーカメラを仕掛けてもらい、動物の生態調査もしてもらっている。

映っているのはオシドリ、バン等の鴨類、キジ、サギ、狸とアライグマが多く、イノシシや鹿はまだ来ていないようだ。

 

完全メンバー制である東京クラシッククラブは、限られたメンバーのみ立ち入りを許され、ビジターは立ち入ることができないので、生態系を守る聖域(サンクチュアリ)となり得る。ゴルフ場開発者からすると目の敵であった大鷹を始め、多様な生き物の住めるゴルフ場モデルにしたいと思っている。

 

日本には2400ものゴルフ場があるといわれている。

森の中を馬で歩き、子ども達が裸足で遊び、バードウォッチング等自然観察をできるようにすることで、観光資源をつくるだけでなく、環境問題や生物多様性を啓蒙する場所にすることができる。

 

それは、環境破壊の象徴であったゴルフ場が、周辺の森、ひいては日本の森を守る存在に生まれ変わるということだ。

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